大判例

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徳島地方裁判所 昭和25年(行雑)3号 決定

申請人 浜口清栄

被申請人 徳島税務署長

一、主  文

本件申請を却下する。

訴訟費用は申請人の負担とする。

二、事実および理由

申請人は「別紙目録記載物件に対し被申請人がなした昭和二十四年度所得税滯納処分を停止する。」との決定を求め、その理由として「申請人は肩書地で紙凾製造業を営んでいるが、昭和二十四年度所得額は営業上の所得金十九万四千六百五十三円、連合電気株式会社より受けた給與所得金四万四千二百五十円合計金二十三万八千九百三円であり、その所得税額金九万四千五十一円五十銭となり、扶養家族五人に対する控除金九千円を差し引き八万一千四百五十一円五十銭がその納税額であるから申請人は昭和二十五年一月三十日所得額の確定申告を被申請人に提出し、これを相当する税額を納付済である。しかるに被申請人は申請人の右確定申告に対し所得金額を金七十七万一千四百円、これに対する税額金四十一万三千四百八十円(扶養控除差引)と更正決定を爲し、その旨同年二月二十六日申請人に通知があつたので申請人は同年三月十四日被申請人を経由して高松国税局長宛審査請求を爲したところ、被申請人は右請求に対する決定の爲されない前に同年四月十八日自己の決定した税額につき申請人所有別紙目録記載物件に対し滯納処分による差押手続を爲し、同月二十八日右物件を被申請人の官署に運び入れるとの通知を受け取つた。申請人の前記所得額は昭和二十四年中毎日正確に記帳した営業帳簿に基いて算出したものであるが、被申請人は申請人の要求にもかゝはらず帳簿の点檢を爲さず、漫然更正決定の上本件滯納処分に及んだのであつて、申請人は徳島市内で地所約四百五十坪、建物倉庫十三坪工場二棟四十坪を有し、この價格金百万円に上り又他に動産も所有しているが被申請人はことさら申請人を心理的に圧迫して納税せしめようとの意図に出たものか営業用機械器具材料等に対する本件差押処分に及んだのであるが、申請人は前記更正決定に対する取消訴訟を当廳に提起したから右本案判決済まで本件滯納処分の停止を求めるため本申請に及んだものである。」といふにあり、被申請人の右に対する意見は「本件申請を却下する。との決定を求める。その理由として、被申請人は申請人に対し昭和二十四年度所得税を昭和二十五年二月二十日更正決定し、同年三月二十日を納付期限とする納税の告知を爲し、納税注意書を送り或は係官を派遣して自主的納付を勧誘したが右期限を経過しても納付しないので同年三月三十一日、同年四月七日を指定期日とする国税徴收法による督促状を発し、四月十八日本件差押処分に及んだのである。申請人は本件滯納処分によつて金銭賠償の不可能な損害を受けるのでもなく、又本件処分を停止することは徴税の急務からいつて公共の福祉に重大な影響あるものであり、結局本申請は行政事件訴訟特例法第十條所定の要件に該当しないものとして却下されたい。」といふにある。

よつて本件申請の当否を判断するに、申請理由の要旨は、被申請人は申請人に対し昭和二十五年四月十八日前年度分所得税滯納処分として申請人所有の別紙目録記載物件に対し差押処分を爲したが、申請人は徳島市内で地所約四百五十坪建物倉庫十三坪工場二棟四十坪を有しその價格百万円に上り、他に動産も所有しているにもかゝはらず、被申請人はことさら申請人を心理的に圧迫して納税せしめようとの意図の下に日常使用の営業用機械器具材料等について本件差押処分を爲したのであつて、申請人は本件物件を失ふことにより明日の生計に窮するのであるが申請人は先に被申請人の爲した所得税課税処分に対し昭和二十五年三月十四日高松国税局長宛審査の請求を爲したところ、その処分の未だ爲されない前に本件差押が爲されたので、申請人は当廳に対し被申請人の爲した右課税処分(更正決定)に対する取消の本案訴訟を提起した、というにある。思ふに行政事件訴訟特例法第十條によれば、行政処分は原則として当該処分に対する抗告訴訟の提起にかゝはらずその執行を停止されないのであつて、ただ当該処分の執行により生ずべき償ふことのできない損害を避ける爲緊急の必要があると認めるとき裁判所は執行停止の決定を爲しうるのであるが、当該停止処分が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのあるときはこの限りでない。と規定されていて、申請人の申請理由によつては右第一要件を充たすに足らず、もし本案訴訟で当該課税処分が取消されたならばこれに関連する滯納処分もその効力を失い、申請人はこれが賠償を国に請求できる筋合であり、敢て本件執行停止に及ぶ必要はないわけである。他方所得税は現下の国家財政收入の中樞部を占めていることは顕著な事実であり、これが滯納処分を停止することは公共の福祉に重大な影響あるものであるから前掲第二の要件によつても本件申請を許容することはできない。

以上の理由により本件申請はこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 今谷健一 赤塔政夫 三木光一)

(別紙目録省略)

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